ITエンジニアの視界

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CoinhiveがNGなのは「利益が設置者にしかない」からかもね。

Coinhive騒動。有罪。これは悪しき判例なのか。 www.itmedia.co.jp

Coinhiveで家宅捜索の一見を耳にしたときは「なんだそれ?何が問題なのよ?」と率直に思いました。いろいろな人が反応を示し、家宅捜索の根拠からJavascriptのライブラリを読み込む前にいちいち確認するようなサイトまで出て、Web系に携わるエンジニアを中心に大騒ぎになりました。裁判の結果は有罪。法律に抵触したと司法が判断したのでNGは確定。この判決に憤慨する人たくさんいると思います。

そんな中ですが、なんでそんなことになったのかを考えてみたんです。判決の理由は公開されれば見えますし、そこで明らかになるんですけどね。

Coinhiveって広告を表示させることなくマネタイズができる手段。悪しき広告が表示されず、利用者が必要としている情報だけ提供できる素敵な手段だと思った。けど、これが落とし穴だったと思うんです。 法律上、他人のPCのリソースを勝手に使用してOutなのだというところですが、Coinhiveの方法だと「利益の所在がはっきりしてしまう」から起きたことなのでしょう。

広告は、利益の所在がはっきりしません。少なくとも二者、普通三者に利益の所在が発生します。「広告主」「運営者」「閲覧者」の三者です。広告主は広告を掲載することで取引機会を得られます。運営者はアフィリエイト報酬にて利益を得られます。問題は閲覧者で、悪しき広告では不利益を被るのですが、閲覧者によっては利益を得る機会にも成りえます。広告であれば三者が利益を得ることできるので不利益になるケースは限られます。「広告が悪しき広告」「閲覧者が広告を不要感じて消したいと思う」のがその例になります。Coinhiveの設置はこの不利益を防止するのに対して効果的な手段となります。しかし、一方で「広告主」「閲覧者」は機会を得る場を失うことになります。不利益を得なくなる一方で利益も得られなくなるということです。

Coinhiveのマイニングは、広告サイトで閲覧者が得る不利益を防ぎつつ、運営が自力で収益を上げサイトを維持できる一方、広告主や閲覧者が広告から得る利益はなくしてしまいます。そういう場が醸成された中で、運営者が閲覧者の同意なく閲覧者のPCを使ってマイニングを行い運営費を得るというのは、運営者のみが利益を得ることになり閲覧者の持つ労働力の搾取をしたということになる。そういう理解を私はしました。

「閲覧者からの同意が得られれば良い」についても、Javascriptの読み込みをいちいち確認するサイトのアプローチ(確認を取ればOKだろ?なやり方)は効果的ではないのでしょう。なぜなら、「金が必要なら、有料サイトという例があるのだから、その手段でマネタイズをするのが、情報とその対価の取引として健全である」と言われれば反論が難しいからです。Coinhiveのマイニングは、従量課金ではなく従量報酬方式だからです。閲覧者がサイトを開いていれば、閲覧者に利があろうとなかろうと運営者は利益を得てしまう。これは情報提供にたいする対価とは言いづらく、搾取のほうが体としてしっくりきてしまいます。コインパーキングに車を停めるとき、車を停めて置けるから利用者はお金を払って自分の車を停め、従量課金に従う。自分が住まない部屋を借りる(見ないサイトを開いておいとく)として、そうするのは部屋の居住権を持っているからこそ家賃を払う。どちらも利用者に利益や理由がありますが、Coinhive設置サイトにはこれら利益や理由が当てはまらない。

CoinhiveがNGなのは「利益が設置者にしかない」から。経済活動における等価交換(いや、対価交換・不等価交換のほうがマッチする?)の原理に反する度合いが限度を超えたレベルでOutだったのだと思います。

警察や検察の「技術に対する理解が足りない」という指摘をするエンジニアもいましたが、「そういうことではない」のでしょう。